山本達也

ソーシャルメディアは、エジプトの人々に「我々は一人ではないのだ」、「同じフラストレーションを溜めている人々は他にもいるのだ」、「同じ夢を共有している人々がいるのだ」、「多くの人が自由を気にかけているのだ」ということを気づかせた。こうしたソーシャルメディアを介した「心理的な連帯」と「想いの同期化」が、これまでのエジプト社会で人々を行動に転嫁させることなく思いとどまらせていた「恐怖の心理的な壁」(fear of barrier psychological)を乗り越えさせたという。 つまり、エジプトの若者層を突き動かしたのは、ある種の「単純な正義感」であり、そこには政治的なイデオロギーも党派性も見当たらない。しかし、それゆえに、若者たちの主張は他の若者たちに簡単に伝播し、共感が共感を呼ぶことで、爆発的な勢いを獲得することができたのである。 カギは「心理的な連帯」と「想いの同期化」であるが、それを可能とするのは「共感」を呼ぶことのできるコンテンツやメッセージの有無である。